投稿者名:タックルオフ工房
2017/12/12 閲覧数:29,546
こんにちは。タックルオフ工房の曽根です。
近年非常に盛り上がっているアジングロッドのチタンティップ改造ですが、弊社でも昨年よりオリジナルブランクとそれにあったオリジナルの2段テーパーのチタンティップの販売を開始しております。
先日当サイトでもチタンティップ付きのオリジナルブランクを少量販売を開始致しました。
今ではネット上で様々な加工方法が紹介されており、ご自分でやられる方も多いようですが、高額なブランクを買って自分で加工して失敗したらどうしよう…と考える方も多いでしょう。
それなら最初からチタンティップを繋いだブランクを販売したらどうか…という思いから繋ぎ方をいろいろ模索し販売を開始した次第です。
今回はこの「ブランクにチタンティップを繋ぐ」という方法を、曽根流として紹介してみようと思います。
先人の技術をリスペクトしつつ、長年竿の修理・改造に従事してきた知識と技術を合わせ、いま考えうるベターな方法を紹介致します。
まあ技術というのは日々色々なアイデアが浮かんでくる為数日で改良…という場合も多々あります。
新しいやり方ができた時にはまたアップさせていただこうと思います。
それでは少々長くなりますが、手順をご紹介させていただきますね。
今回使用するブランクとチタンティップはもちろんこちら。実はこのサイトを管理している『オンラインショップ事業課の上村が規格・開発の商品です』。
オリジナルブランク「ロジギア・アジングストリーム」高弾性40tカーボンを使用。
「オリジナルチタンティップ」は、2段テーパーにより接続部分の曲がりと、アタリの反響を大きくする調子を両立しています。
更に接合部分があらかじめ逆テーパーに加工されている為、ブランクとの接合も容易です。
まずはじめに、ブランクの先端を「15mm」カットします。
カットしなくても何とかつなげることもできますが、5~15mm程度カットすることで、チタンティップの込みの深さを得ることができます。
15mmカットした時の切断部分の外径はおよそ「1.4mm」です。
それに対してティタンチップの一番太い部分の外径は「1.5mm」となります。
当然面(つら)が合わなくなりますがこれについては後ほど…
写真のように「15mm」の部分にマスキングテープを巻いてカットします。
カットするには「目立てヤスリ(ひし形ヤスリ)」という両刃のヤスリが使いやすいです。
鋸などではバリが出やすくこのような細い部分をカットするのには向きません。
カットした後は、紙ヤスリで断面を整えておくようにしましょう。
カットしたブランクの先端に、チタンティップが接合できるように逆テーパーの穴をあけます。
今回使用するヤスリです。一番上はチタンティップの逆テーパー部分です。
正確にピッタリのテーパーのヤスリがあればいいのですがなかなかそううまくはいきません。
数本のヤスリを使い分けて作業を進めていきます。
まず先端部分の補強をします。
これをしないでヤスリを入れていくと口が裂けて割れてしまいます。
ここで使用するのが「ケプラート セキ糸」という糸と、「糸止マニキュア」という糸ほつれ防止剤です。
「ケプラート セキ糸」は一般的にはアシストフックの作成等に使用されている低伸度の糸です。
その為、PEラインなどでもできます。ちょっと高くつきますが…
低伸度の糸を使用する理由はこの後説明します。
まずセキ糸を先端部分に巻きます。
先端の1mm位は巻かないようしてください。
口ぎりぎりで巻くと、内径を広げていく過程でヤスリに糸が巻きついてしまう場合があります。
綺麗に巻く必要はありませんので、端はテープなどで止めるだけで結構です。
補強であれば、一般的なスレッド(糸)でもいいと思われますが、実はスレッドというのは伸びるため巻くとかなりの「圧」がブランク加わります。
その為内径を加工して薄くなってきたブランクを「潰す」事になります。
当然その瞬間スレッドも一瞬でほどけます(経験済み…)。
テープでの補強も試してみましたが、加工後はがそうとすると、薄くもろくなったブランクがテープにくっついてきてしまいます(これも経験済み…)
低伸度の糸を使うことで上記のトラブルが起きにくくなります。
糸を巻き終えたら、「糸止マニキュア」を塗ります。
これは速乾性のクリヤーの為、塗った後すぐに次の作業に入ることができます。
これを塗る理由は、この後ヤスリで内径を広げる作業に入るわけですが、その際の振動で糸が動いてしまうことがある為です。
特に電動ドリルや旋盤機、ルーターなどで作業をした際には振動が起きやすく、少しずつ糸がほつれてきてしまう場合があります。
マニキュアを塗ることでこれを解消することができます。
ただマニキュアを塗ることで糸の中の染料が溶けだし、ブランクに色移りする場合がありますので注意が必要です。
その為長く巻きすぎると、色移りする幅も長くなってしまいガイドを取り付ける際に隠し切れない場合があります。
補強ができたらヤスリで内径を広げていきます。
今回用意したヤスリは、ダイヤモンドの粒子を蒸着させたいわゆる「ダイヤモンドヤスリ」(上)と、金属の棒の先端にキザを彫り込んである一般的なヤスリ(下)です。
ダイヤモンドヤスリは右周りでも左回りでも問題ないですが、もう一本のヤスリは目が「らせん状」に切られており右回りだと奥に食い込んでいくような作りになっています。
ちょうどドリルの刃のようになっています。
こちらでは手でやるよりも、ルーター・旋盤機を使用することも多いです。
その為、後者のヤスリの特徴を確認せずに旋盤機に取り付けて加工しようとしたら…あっという間に食い込みすぎで先端が破損しました…(゚ノ´Д`゚)ノ゚
この手のヤスリを使用する場合は必ず手で作業した方がいいです(※下の写真はダイヤモンドヤスリを使用しています)
実際にチタンティップを差し込み、確認しながら少しずつ加工していきます。
また、工房では必要に応じてチタンティップの接合部分も加工します。
オリジナルチタンティップはすでに接合部分は加工済みですので基本的には不要な作業ですが、手早く奥まで入れたい時などには薄皮一枚加工する場合もございます。
使用する工具はルーターと専用スタンドにて固定されたグラインダーです。
ルーターのチャックにチタンティップの先端を挟みます。
※ルーターには三爪チャックアダプターを取り付けてあります。
ルーターでチタンティップを回転させながら、グラインダーに削りたい部分を当てます。
グラインダーにはダイヤモンドヤスリがついた砥石を使用しておりますがあっという間に削れます。
摩擦ですぐに熱くなるため、少し削っては冷やしの繰り返しでやらないと焼きが入ってしまいます。
このようにティップを回転させながらグラインダーで削ることで、円状にきれいに加工しやすくなります。
削りが終わったら接着です。
内径加工は必ずしもまっすぐ穴をあけることができるかというと、それは非常に難しいです。
またチタンティップも癖がある為、まっすぐ取り付けることが困難です。
ただほとんどの場合、チタンティップを少しずつ回してチェックしていくことで、まっすぐに取り付けることのできるポイントが見つかります。
一番まっすぐに取り付けることのできるポイントがわかったら、印をつけておきます。
接着にはチタン・カーボンが強力に接着できるものを使用します。
今現在は手軽に入手できるセメダインの「メタルロック」を使用しています。
2液式の接着剤で配合は1:1。
撹拌して接合部分に塗布して接着します。
事前に確認した向きを合わせて接着します。
この際、再度まっすぐについているか確認しましょう。
硬化すれば接着完了です。
一般的にはこれで完了です。
この後ガイドを取り付けますが、必ず接合部分にはガイドを取り付けて口が裂けるとのは防ぐようにします。
しかし当工房ではもうひと手間加えます
この接合部分にカーボンロービングを巻きつけて補強します。
カーボンロービングとは糸状のカーボン繊維です。
これを巻きつけてエポキシをしみこませることで、そこにカーボンの層を作ることができます。
まず、カッターで巻きつける部分(おおよそ10mm程度)の塗装をはがしてしまいます。
これは少しでも仕上がりを薄くするための前処理になります。
はがしたところです。
カーボン巻する前にこのようにテープを巻き、この後塗布するエポキシが余分なところに流れないように保護します。
ここで使用したテープは「クリアラインテープ」という一般的には塗装のマスキングなどをするときに使用するビニール製のテープです。
紙製のマスキングテープだとエポキシが固まった後、切れてしまい取りにくくなってしまいます。
カーボンロービングを巻きつけていきます。
赤い矢印部分まで巻いて折り返します。
始めに説明しましたが、この部分が一番太い「1.5mm」の部分です。
ブランクの先端は「1.4mm」の為、どうしてもこの一番太い部分までは差し込めません。
ただこの段差を利用して、カーボンを巻いたときにカーボンとの段差を少しなくすことができるというわけです。
はみ出しているカーボンの「ケバ」は巻はじめに巻き込んである端です。
こうすることで、縦の繊維も入れることができます。
折り返したら下まで巻いていきます。
写真のようにテープで固定します。
巻き終えたらエポキシを塗布します。
使用するエポキシは一般的なロッドビルディング用のエポキシでも構いませんが、専用のものも出ているため今回はこちらを使用します。
ビルディング用のエポキシとの違いは粘土が低いことです。
その他の機能的な違いもありますが、これが一番違う点です。
配合比率が10:3で、使用する量が少量の為、はかりで計量して混合します。
混合できたらエポキシを塗布します。
筆で塗っていますがきれいに塗る必要はない為、つまようじの先につけて塗っても構いません。
塗った後、エポキシをティッシュでふき取ってしまいます。
とってしまっていいの?と思うかもしれませんが、ある程度中に浸透していますので、表面をぬぐってしまっても問題ありません。
この後カーボンの上を、先ほど使用した「クリアラインテープ」で締め上げながら巻いていきます。
この時に中から液が染み出てきますので、先ほどのようにティッシュでふき取ってしまっても問題ないことがわかります。
上まで巻いたらさらに下へ巻いて固定します。
このまま、まる一日放置して硬化させます。
このエポキシは、更に温めることでより硬化するということで、レフランプで温めてます。
その後テープをはがします。
はがした後はカーボンの段差がありますので、それをペーパーで削って平らにしていきます。
あまり削りすぎると補強の効果が弱くなってしまいますので、ほどほどにした方がいいです。
このくらい平らにできれば十分です。
以上で完成ですが、店頭販売やネット販売用のチタンティップ接合バージョン・ロジギアブランクは、この上にクリヤーをかけています。
販売時に少しでも見た目をよくするためのこだわりです。
機能的な面はまったくありません。
本来カーボンロービングを巻いているのも、ガイドを取り付けなくても曲げて調子を確認できるために処理したものです。
店頭で販売していたり通販で購入いただいた方も、とりあえずブランクを曲げてみたくなるのが心情です。
何かしらの補強をしないで販売した場合、店頭で曲げたり購入後ご自宅で曲げれば、簡単に接合部分は避けてしまう可能性が高くなります。
ご自分で接続し、接続部分にしっかりとガイドを取り付けるのであれば、カーボン巻の処理は必ずしも必要ではありません。
ただガイドを取り付ける際に接続部分には、一度スレッドを巻いてコーティングしてからその上に改めてガイドを取り付けるやり方、いわゆるダブルラッピングをした方が強度的にも心配がなくなります。
今回はチタンティップの取り付け方をご紹介させていただきましたが、同様にカーボンソリッドも取り付けることが可能です。
先端数センチが折れてしまった竿などは、カーボンソリッドをつなぐことで本当に使える調子のロッドによみがえらせることも可能です。
以上となりますが、いかがでしたでしょうか?
旋盤機やグラインダー等、少々特殊なものもご紹介させていただきましたが、そういったものを使用しなくても十分できるということがご理解いただけたと思います。
ロッドの製作や改造は、決して特殊な技術がないとできないものではありません。
是非気軽にチャレンジしてみてはいかかでしょうか?
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